病態RNA制御学
病気になると遺伝子の働きが変わることがあります。これは遺伝子から作られるRNAの発現量の変化として捉えられます。また、1つの遺伝子からスプライシングという過程を経て、複数の種類のRNAが産生されます。このスプライシングの様子が病気によって変化することや、スプライシングの異常自体が病気の原因になることがあります。RNAに注目することで病気の理解の手掛かりが得られることは少なくありません。当研究室では、RNAの発現やその調節に注目して、病気で何が起こっているか、そして病気を治す鍵となる分子は何かを探求しています。また、RNAは病気を治す道具としても使用できます。特定の遺伝子を狙ってその働きを阻害する際に、RNAを使用することができます。私たちは、RNAなどの核酸分子を薬として活用する方法についても研究しています。
研究室メンバー
研究テーマ
-
認知症関連遺伝子のRNA代謝制御の解明とその人工制御
認知症に関わる遺伝子について、RNA代謝制御の観点から研究しています。特にAPOE、TREM2、CD33を中心としたアルツハイマー病の疾患感受性遺伝子(リスク遺伝子)の発現制御の解明を目指しています。また、これらの遺伝子の働きを人工的に操作することで、認知症の病態に治療介入できるかを試みています。
-
リピート配列伸長疾患で生じるRNA・タンパク質凝集体の動態制御因子
遺伝子の塩基配列の中にはCAGやCTG、GGGGCCなどの塩基が繰り返す配列(リピート配列)が存在します。このリピートの長さが異常に伸びることが原因となる疾患が多数知られており、ハンチントン病や脆弱X症候群などが代表例です。これらの疾患では、RNAまたはタンパク質からなる凝集物が細胞内に蓄積します。筋強直性ジストロフィーや脊髄小脳失調症、神経核内封入体病などの疾患に関してこの凝集物の形成や分解に注目し、疾患に影響を与え得る分子を探索しています。