分析化学
様々な疾病の早期発見および薬物による治療効果のモニタリングのために、必要とされる生体成分の検出のみならず、発症機序の解明を目的として新しい分析手法、評価法を開発しています。開発した手法を用いて、新たな診断マーカーの探索など、病態に関わる代謝産物・タンパク質・遺伝子を細胞レベルで解析し、得られた知見が医療の現場において役立つものとすることが重要です。臨床系を支える基礎系の研究室として、薬学における分析化学の意義を示すべく研究に取り組んでいます。
研究テーマ
酸化ストレスが関与する疾患とレドックス制御に関する研究
研究概要
酸化ストレスに起因する傷害と疾病を、分子レベルで解析する。特に、酸化ストレスが関与する疾病の早期発見と治療の指針となる様な生体分子の変化を見出す事で、疾患の原因と治療に繋がる知見を得ることを目的とする。具体的には、ストレス応答するタンパク質や、抗酸化性低分子の挙動に対し、その質的、量的な変化を詳細に分析する。
中枢性疾患の診断マーカーの探索と発症メカニズムの解析
研究概要
当研究室では、これまでカルボニルストレス性統合失調症に注目し、その発症に関わる成分の分析と、標的となるカルボニル化タンパク質の解析に取り組んできた。現在は、カルボニルストレスの関与が推定される様々な中枢性疾患におけるバイオマーカーや標的タンパク質を解析すると共に、その蓄積と分解機構について研究を進めている。
システインの代謝産物である結合型イオウの生理機能に関する研究
研究概要
我々は、1970年代の初めに定義された生体成分である‟スルファン硫黄“に注目して研究を行い、1993年に、哺乳動物において、システインから生理的に硫化水素が生じるが、遊離型で存在する量は極微量で、その多くが他の硫黄原子に結合した不安定な状態として存在することを明らかにし、‟結合型イオウ”の名で定義した。その後、21世紀にはいって、生体に存在する第三のガスとして硫化水素が世界的に注目され、その生理活性に関する多岐に渡る報告がなされている。しかし、当研究室では、その働きの多くは硫化水素ガスではなく、結合型イオウ(スルファン硫黄)と他の生体分子の反応により起こるものであると考えている。現在、結合型イオウの生理的存在意義にあらためて注目し、新たな汎用的な測定法の開発を行っており、今後、その応用として、様々な疾患との関わりについて解析を試みる予定である。