チーム医療でがん患者を支える、病院の臨床薬剤師



東京慈恵会医科大学附属病院 薬剤部 勤務
元日田 阿子さん
(2018年 薬学科卒業)
現在の仕事

病院内の多職種と協働し、積極的に治療に関わる

病院の臨床薬剤師として、内服薬や外用薬の調剤業務、調剤、注射調剤業務、抗がん剤の混注業務、病棟で患者さんの薬の確認や服薬指導などに携わっています。
薬を通して治療に積極的に関わり、医師や看護師、栄養士など多職種と協働する仕事であるところが魅力です。例えば、新しい抗がん剤の使い方を医師とディスカッションしたり、薬の副作用を抑えるために看護師と連携したり、薬の影響で食欲が落ちてしまう患者さんへの対応を栄養士と検討したりと、さまざまな場面でチーム一丸となって治療に取り組んでいます。
日々更新される薬や治療について学び続けることは大変ですが、患者さんやほかの医療スタッフの要望に応えられたときにやりがいを感じます。




大学時代

病院での実務実習が、臨床現場を志すきっかけに

本格的に今の仕事をめざすことを決めたのは、大学5年次に体験した病院での実務実習後です。もともと薬学科に進学したのは、中学・高校のときに好きだった化学・生物・物理を活かせる仕事に就きたかったから。身近に医療関係者がいたわけではなく、薬剤師の仕事については、調剤薬局で働くイメージしか持っていませんでした。
2、3年次頃まで、「私は臨床に向いていない」と勝手に思い込んでいたこともあり、将来は研究職か製薬メーカーで働こうと考えていました。しかし、本格的な臨床実習が始まる前に、患者さんとの模擬面談や「医療コミュニケーション学」の実習があり、患者さんとの接し方、生死に関わる話の機微などを学びました。
臨床現場のイメージを持てたことで自信を持って実習に入ることができ、目の前の患者さんの悩みを解決したいという気持ちが膨らんでいったことを覚えています。また、病棟で働く際の心構えとして、言葉遣いから服装、態度まで細かく指導していただいたことも今に役立っています。






薬剤部長に相談中
(薬剤部長の川久保 孝先生も明治薬科大学の卒業生です)


就職サポート

大学サポートや卒業生ネットワークを活用し、卒業後の進路を検討

薬学科=薬剤師というイメージが強いかもしれませんが、実際には、新薬開発、衛生管理、食品や化粧品の開発、在宅医療を担う薬剤師など、想像以上に多様なフィールドで活躍できます。
明治薬科大学の卒業生も病院、薬局、製薬会社、行政、研究所、一般企業など、各業界にいらっしゃいます。つながりを大切にされる方が多く、同じ病院に勤務する卒業生同士はもちろん、他病院の卒業生とも連携して情報交換を行っています。
学生時代は、病院薬剤師や企業で働く卒業生から仕事の話を聞く機会があり、とても参考になりました。また、現在勤務する病院は、在学中3か月間にわたり実習をしていた場所だったので、就職を考える際の基準になりました。
さまざまな病院のWebサイトを見て規模、診療科の数、入院患者の重症度、立地などを比較したり、同級生の実習先の話を聞いたりと、多くの情報の中から自分に合った進路を絞り込んでいくことができました。キャリア支援課のサポートも手厚く、職員の方から病院の選び方や募集が出る時期を教えていただいたり、エントリーシートの添削や面接の練習をしていただいたりと、バックアップが充実していて心強かったです。最終的に、治療、研究、そして実習などで学生の教育にも携われる現在の職場を選択しました。
業務とのバランスを取って自分の研究を進める難しさがありますが、ある抗がん剤の副作用についての論文を執筆しました。医師や看護師とはまた異なる薬剤師の視点による研究がより広がるよう、尽力できればと考えています。これからも、常に新しい知識や情報を取り入れて自己研鑽を続け、将来は日本医療薬学会が認定する「がん専門薬剤師」になり、一人でも多くの患者さんの役に立っていきたいです。







公務員薬剤師として、薬学の知識をよりよい社会づくりに役立てる



東京都庁 保健医療局健康安全部薬務課 勤務
山崎 顕正さん
(2021年 薬学科卒業)
現在の仕事

行政としての立場を意識し、医薬品の安全を守る

東京都保健医療局の役割は、都民の生命と健康を守るために、質の高い保健医療サービスを提供することです。都民の皆さんが安心して暮らせるよう、多様な職種が連携し合い、さまざまな業務を担っています。
私は公務員薬剤師として、東京都が実施する資格試験の試験運営や薬機法・薬剤師法といった法令に対する照会対応などに従事。また、ドラッグストアや薬局などで一般用医薬品の販売・相談を行う登録販売者の資格全般にも関わっています。
医薬品分野の知識はもちろん、薬事関係法規などへの理解、総合的な判断力や理解力も求められ、重い責任が伴う仕事である一方で、その分、社会への還元も大きく、やりがいのある仕事でもあります。事業者の方から行政としての見解を聞きたいという問い合わせが入ることも多いので、自身の発言が行政回答として基準になることを常に意識し、社会全体に与える影響をしっかりと考えながら、できる限り明確に回答するよう心掛けています。




仕事への道

1年次からキャリア支援課を活用し、将来の可能性を模索

公務員を志すようになったのは大学4年次の頃です。漢方や東洋医学を学びたいと思い薬学部を選んだのですが、将来、「薬剤師としてどのように働くか」は漠然としていました。そこで、入学後早い段階からキャリア支援課を活用し、情報収集しました。
「就職活動体験発表会」というイベントでは、薬剤師の枠を超えて就職活動を行った先輩方の体験談を聞き、薬をつくったり提供したりするだけでなく、薬学の知識を活かせる仕事の選択肢が、想像以上に幅広いことを知りました。なかでも、公務員は社会の制度やルールといった側面から多くの人の役に立てると感じ、将来の進路としてめざす気持ちが芽生えたことを覚えています。
本格的に公務員を志すターニングポイントになったのは、3年次の夏に受講した大学の「公務員試験対策講座」です。初めて受けた模試では成績が大変悪く自分には向いていないのではないかと落ち込むこともありました。しかし、膨大な量の過去問の準備から模擬面接、小論文対策に至るまでキャリア支援課の職員のみなさんが本当に親身にサポートしてくださり、最終的には、東京都職員採用試験の合格をつかむことができました。






大学時代

幅広い薬学の知識や、他分野にも広げた学びが仕事の基盤に

学生生活を送る上で大切なのは、興味を持ったことに積極的に取り組み、視野を大きく広げることです。
1年次の「薬学への招待」という授業では、麻薬取締官の話を聞く機会があり、危険ドラッグの規制がなかなか進まない現状や難しさを学びました。それまで考えたこともなかった“規制する側”の視点から物事を見る発想を得られたことで、公務員となった今、規制に関する様々な提案に繋がっています。
また、IT関連や宅建士、税理士など薬学に関係のない分野の資格にも興味を持ち勉強をしてきましたが、思いがけない場面でそのときの知識が役立つこともあります。
4、5年次の頃は、ちょうど東京2020オリンピック開催を間近に控えていたので、培った薬学の知識を役立て、訪日外国人に向けた市販薬のガイドブックを作成することを思いつきました。クラウドファンディングで資金調達し、企画立案からメーカーへの交渉、英訳、冊子デザインなど周囲の人たちの協力を得ながら出版・配布まで完遂。大学での実務実習や卒業研究などとの並行はとても大変でしたが、どれも楽しみながら取り組ました。
このような経験すべてが力となり、社会に出てからも、新しい事業に躊躇なく取り組む自信につながっています。そして、薬学の専門性に加え、幅広い視野を身につけることで、無限の可能性が広がると実感しています。





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