令和5年度防衛医科大学校・明治薬科大学合同多職種連携教育(IPE)(各学科1年生対象)が実施されました
防衛医科大学校と明治薬科大学は、医学科1年生、看護学科1年生、薬学科1年生全員を対象とした合同多職種連携教育(IPE)を実施いたしました。今年で3年目を迎えるこの合同IPEは、2大学間の協定に基づく正式なプログラムであり、毎年8月は各学科1年生を対象に、2月は医学科5年生、看護学科3年生、薬学科5年生をそれぞれ対象として実施しております。この年2回の合同IPEは、学修段階に応じて異なった内容となっておりますが、両プログラムともに、職種間連携について教育するに留まらず、オンラインでの診療、看護相談あるいは服薬指導といった場面で、これからの医療者にますます要求される遠隔コミュニケーション能力の涵養も目的としていることが大きな特色です。
参加対象は、防衛医科大学校医学科1年生81名、同看護学科1年生117名、明治薬科大学薬学科1年生382名で、医学科1~2名、看護学科2~3名、薬学科7~8名からなる50グループ(1グループあたり11~12人)に分かれて参加いたしました。各グループにつき、1名の教員(医学科10名、看護学科11名、薬学科29名)が評価者を担当するとともに、後述するIPE caféでは、ファシリテータとしても参加いたしました。学生と評価者との連絡は、すべてEメールを介して行われ、この連絡についても評価項目とすることで、社会人として身に付けるべき、Eメールのマナーも学ぶことができるようになっております。
まず学生は、2学が共同で作成した2本のビデオ教材を視聴しました。1本目のビデオには、2学の代表者のメッセージに続き、医師、看護師および薬剤師が出演するオンライン座談会の模様が収録されており、学生は、それぞれの職種の仕事内容や多職種連携の重要性について学びました
(左)代表者メッセージ 四ノ宮 成祥 防衛医科大学校長
(中)代表者メッセージ 越前 宏俊 明治薬科大学学長
(右)医師・看護師・薬剤師座談会ビデオ
2本目のビデオは、がんに関する基礎知識に始まり、その後、実際に我が国で発生した医療事故を参考とした架空の医療事故事例について提示する内容です。
事例提示ビデオ
学生は、課題として、それぞれの職種の役割や連携関係について、1本目の座談会ビデオを参考にしながら、自ら調べてまとめるとともに、2本目のビデオで提示された医療事故事例について、その発生要因や防止策について考察し、期限までに評価者にEメールで提出いたしました。評価者は、課題内容をルーブリック評価表を参考に採点するとともに、それぞれの学生の課題にコメントを記入して返送することで、形成的な評価も実施しております。なお、評価者は、課題等の評価に加え、Eメールでのやり取り、課題の期限内提出およびIPE caféへの参加態度を加味した総合得点を算出し、担当グループで最も得点が高い学生から1~2名を最優秀学生として選出いたしました。最優秀学生は、後日、2学それぞれの代表者から表彰を受けます。
8月25日には、IPE caféが開催されました。これは明治薬科大学が開発したMicrosoft Teams®をベースとした遠隔会議システムを使用して、グループ毎にオンラインで懇親会を行うものです。すべての学生は自宅あるいは学生舎から、教員も自宅あるいは研究室等の個室から参加することで、完全遠隔実施を実現しております。当日は、防衛医科大学校と明治薬科大学に、それぞれ実施本部を設置し、さらに防衛医科大学校の合同IPE担当教官1名が明治薬科大学に派遣され、2学間の連絡にあたりました。明治薬科大学学術情報課は、すべてのセッションを常時モニタするとともに、学生、ファシリテータおよび2学の実施本部からの連絡を受けて、トラブル等の対応にあたりました。
(左)防衛医科大学校合同IPE実施本部
(中)明治薬科大学合同IPE実施本部
(右)明治薬科大学学術情報課
IPE caféでは、原則として、各グループの評価者がファシリテータとして参加いたしました。学生は、それぞれ1分程度で、予め準備しておいた「自己紹介(どうして自分の目指す職種を選んだのかを含める)+ 他学科の学生に聞きたいこと」を発表し、その内容をもとに、自由に懇談しました。最初は、初対面の相手に、かつオンラインで話すことに戸惑う学生もみられましたが、1時間の懇談ですっかり打ち解け、時間を超過してしまうグループもありました。学生は、将来同じ医療現場で働く仲間をより身近に感じるとともに、楽しい時間を過ごしたようです。
IPE caféの様子
(左)グループ6(ファシリテータ:薬学科 高橋 雅弘 先生)
(中)グループ9(ファシリテータ:医学科 守本 祐司 先生)
(右)グループ17(ファシリテータ:看護学科 村上 希 先生)
学生は、上述の課題の他に、実習後課題を実施して提出いたしました。実習後課題は、合同IPEについてのアンケートと実習の振り返りからなるもので、学生の学修状況を把握するとともに、合同IPEの改善に資する重要な資料として活用しております。今回は、94%の学生が、本合同IPEを有意義であったと回答いたしました。
全グループでの評価および課題の返却が終了した後に、講評・事例解説ビデオが配信されました。このビデオには、2学の実施責任者によるIPEの講評に続いて、今回課題として提示された医療事故事例についての解説が収録されております。学生には、このビデオを視聴することで、事例発生の背景や防止策について、自らの考えと対比しながら改めて学修し、多職種連携の重要性を認識することが期待されます。
(左)実施責任者講評 小林 靖 防衛医科大学校副校長
(中)実施責任者講評 蒲生 修治 明治薬科大学教授
(右)事例解説
お陰様で、この3年間で、本合同IPEは完全遠隔形式で十分な教育効果を発揮できるプログラムとなりました。感染症流行下でも確実に実施可能であること、遠距離にある単科大学間あるいは総合大学においても離れたキャンパス間で実施可能な本合同IPEは、今後のIPEの新たな方向性となるものと考えております。
防衛医科大学校と明治薬科大学では、今後も、毎年8月と2月に合同IPEを実施して参ります。ご興味をお持ちの大学教員の方は、佐藤 全伯(zenpaku[at]ndmc.ac.jp)(防衛医科大学校)、三田 充男(mitsuom[at]my-pharm.ac.jp)、蒲生 修治(gamoshu[at]my-pharm.ac.jp)(明治薬科大学)まで、お気軽にお問合せくださいませ。当日の実施本部のご見学や実施ノウハウのご提供でお力になれれば幸いです。
令和5年度防衛医科大学校・明治薬科大学合同IPE評価者(敬称略)
・荒木 信 ・小林 真一 ・月村 考宏 ・宮沢 伸介
・荒科 悠子 ・小林 裕人 ・徳永 瑠奈 ・宮嶋 篤志
・安東 彩乃 ・酒井 良子* ・豊田 優 ・村上 希
・石井 里枝 ・佐藤 昭太 ・野澤 玲子 ・望月 靖子
・伊藤 正孝 ・佐藤 仁哉 ・野村 佳代 ・守本 祐司
・内野 小百合 ・下川 健一 ・花田 和彦 ・安 武夫
・大野 恵子 ・杉 富行 ・馬場 正樹 ・柳津 茂慧
・小川 泰弘 ・鈴木 俊宏 ・東 恭一郎 ・山岸 智子
・小田 絢子 ・鈴木 陽介 ・舟橋 由喜子 ・山﨑 紀子
・加來 浩器 ・瀬戸 樹 ・堀内 圭輔 ・山谷 明正
・川北 晃司 ・高橋 雅弘 ・町田 いづみ ・吉岡 範幸
・菅野 敦之 ・田口 潤 ・松井 美帆 ・渡邊 美奈子
・小池 伸 ・田村 吏沙 ・道永 昌太郎
*IPE caféファシリテータのみ担当
令和5年度防衛医科大学校・明治薬科大学合同IPE委員(50音順、敬称略)
・石塚 俊晶 ・川北 晃司 ・田口 潤
・上野 美紀 ・栗原 勲 ・中村 昌子
・越前 宏俊 ・小林 靖 ・野村 佳代
・大野 恵子 ・佐藤 全伯 ・早野 貴美子
・蒲生 修治 ・杉 富行 ・三田 充男