細胞内の情報伝達の仕組みを解明し、新たな創薬標的を発掘する
紺谷 圏二 教授 生化学研究室
2024/06/25
ヒトは約60兆個の細胞から成り、個々の細胞が外界環境の変化に適切に応答することで、個体全体としての恒常性が保たれています。Gタンパク質は細胞内において、そのような応答を制御する"スイッチ"のような役割を果たす分子群です。例えば、ホルモンや神経伝達物質が、細胞膜に存在する受容体とよばれる分子に結合すると、ある種のGタンパク質が細胞内で活性化され、それが一連の反応を引き起こすことで適切な応答が起こります(下図)。
Gタンパク質の重要性は、それらが多くの生理応答に関与していることからも明らかです。例えば、視覚、嗅覚、味覚といった感覚の伝達や、血糖値の調節、免疫反応の制御などです。従って、何らかの原因でGタンパク質が正常に働かなくなると、様々な病気が引き起こされることがあります。実際、ある種の癌ではGタンパク質の機能異常が関わっています。このような研究背景から、最近ではGタンパク質を標的とするような創薬も試みられています。
私たちは、生物の生命活動を支える基盤であるGタンパク質の働きやその制御機構を明らかにすると共に、それらの知見を新たな創薬ターゲットの発掘にも繋げたいと考えています。