微生物の薬剤耐性(AMR)
森田 雄二 教授 感染制御学研究室
2022/05/24
人間は、生まれてから死ぬまで、病気を起こす微生物が体に侵入して症状が出る病気(感染症)になる危険にさらされています。微生物を研究し、感染症の予防法や抗微生物薬(微生物を殺したり、増えることを抑える薬)を開発することで、20世紀には我が国を含む一部の国で多くの感染症が制圧されるようになりました。
しかし、抗微生物薬が効かなくなる薬剤耐性(Antimicrobial Resistance, AMR)をもった微生物が出現するようになり、21世紀において、AMRは公衆衛生における世界最大の脅威の1つになっています。人類はこれまでに新型コロナウィルス感染症のように多くの感染症の世界的大流行(パンデミック)を経験してきましたが、実は「サイレントパンデミック」または「見落とされたパンデミック」とよばれるAMRの世界的大流行も静かに起こっています。
私はAMRが無くなる薬(AMR阻害剤)を開発することで、人類の叡智により得られた貴重な資源である抗微生物薬を再び使用できるようにしたいと考えています。加えて、AMR克服には世界中のすべての人が抗微生物薬を適切に使用できるようにする必要があり、17のSDGsすべてを達成するように努力する必要があると考えています。
AMR阻害剤開発の一例です。この微生物はAMR因子の働きにより薬が効きません。AMR阻害剤によりAMR因子 の働きを悪くすることで、使用できなくなった抗微生物薬を再び蘇らすことができます。