体内でのくすりの変化と動きを明らかにする



体内に吸収された薬は血液とともに全身を巡り、作用を発揮します。その後、薬は体内の酵素によって分解されます。その分解力には個人差があり、効果や副作用の個人差と関係しています。複数の薬を服用すると、薬を分解する酵素の働きが変化し副作用を発現することがあります。逆に、薬が効かなくなることもあります。有効で安全な薬物治療を行うには、薬を分解する酵素の働きとその変化を知る必要があります。
私たちは、鳥取大学医学部の香月康宏博士らが作成したヒト化動物(薬の分解に関連する遺伝子がヒト化している)を用いて、「複数の薬を服用した時に副作用が生じるメカニズム」や「薬を分解する能力に個人差が生じる原因」を明らかにする研究を進めています。ヒトと動物では多くの違いがありますが、ヒト化動物を用いることでヒトを予測することが可能になります。特に、ヒト化動物を用いた研究では、実際に薬を投与し、血液、脳、肺、肝臓、小腸、腎臓など全身の変化を解析することができます。
この特性を活かし、様々な組織での薬の分解、副作用や毒性といったヒトでは研究が難しい課題や細胞を用いた研究だけでは解明できない課題に取り組み、有効で安全な薬物治療に貢献することを目指しています。

薬を投与したヒト化動物の血液や組織中の薬物濃度を分析し、薬物の併用による影響や個人差要因の解明を行います。ヒト化動物を用いた研究では食事や生活環境 を一定にすることができるだけでなく、脳組織などヒトでは採取不可能な組織を用いた解析ができます。
