【プレスリリース】医薬品副作用の早期発見を目指したMPASS(医薬品副作用リスク軽減支援システム)の実用調査(薬学教育研究センター 臨床薬学部門/地域医療学:菅野敦之教授)
2022.08.03
2022年8月2日
報道関係 各位
明治薬科大学
株式会社 龍生堂本店
ミアヘルサ株式会社
株式会社 ハローコーポレーション
株式会社 アルガイア
医薬品副作用の早期発見を目指した
(医薬品副作用リスク軽減支援システム)の実用調査
明治薬科大学薬学部(菅野敦之教授、野口保教授)は、株式会社龍生堂本店(大久保店 : 関下禅美、多摩センター店:三上勝、アイランド店:小林隆)、ミアヘルサ株式会社(医薬事業本部:佐々木理恵)、株式会社ハローコーポレーション(南浦和店:福島徹)、株式会社アルガイア(いろり薬局東長崎店:小林晃洋)と個別に共同研究契約を結び、 (医薬品副作用リスク軽減支援システム)の実用調査をおこないます。
は、患者が医薬品を服用することによって発現する症状(副作用)を見逃さず、軽微な段階で把握することによって、QOLの向上や重篤な副作用の発現を防ぐことを目的として開発されました。また、処方カスケード(注1)を防止することによって、患者に処方される医薬品量を削減することもできると考えています。このように副作用の早期発見ができれば、患者の体への負担だけでなく経済的な負担も軽減できるのです。
本研究は、実際に薬局で を利用することによって、医薬品副作用による患者の不安を軽減するために、原因と考えられる医薬品を速やかに推定できる情報を提供することにより、副作用を軽微な段階で検出し、重篤化のリスクを軽減できることを実証するための調査研究です。
【 研 究 内 容 】
患者が服薬している医薬品の情報(個人情報)を扱うため、開発するシステムはセキュリティを確保する必要があります。 は、JST CRESTの研究領域「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」、研究課題名「ビッグデータ統合利用のためのセキュアなコンテンツ共有・流通基盤の構築」(研究代表 早稲田大学山名早人)の分担研究として開発され、この研究課題で構築されたセキュアな環境で動作するように設計されています。
は、服薬指導時の患者との会話から副作用症状に関する訴えに対し、医薬品添付文書に記載されている副作用情報と で蓄積された利用履歴の情報を基に、その副作用症状の原因と考えられる医薬品を速やかに提示(推定)します。また、 の利用履歴を蓄えることによって、複数の医薬品の飲み合わせによって発現したと考えられる副作用症状を調べることができるようになります。
のもう一つの特長は、副作用名の表現が一致せずとも漏らさずに関連する副作用名を(ファジー)検索することを可能にしたことです。医薬品添付文書に記載されている副作用情報は統一された副作用名ではなく、表現にばらつきがあるため、単純な検索ではキーとして入力した副作用名と対象医薬品の添付文書に記載されている副作用名が一致する医薬品しか検索されません。 は、この問題を解決するために、副作用名を分類しグループ分けしました。このグループ分けは、実際に利用することにより、より精度が向上することが期待できます。
現在の は、薬局にサーバを設置し、ローカルなWiFiの無線基地局をつなげ、指定したタブレット端末だけつなげるシステム構成にしています。タブレットを端末として用いることで機動性を備え、お年寄りの下で操作し結果を提示しながら服薬指導できます。
:医薬品副作用リスク軽減支援システム利用例 |
下図に の利用例を示します。現在のシステムは、最初の画面で患者が服用している医薬品名をすべて入力します。(①)最初(もしくは途中)の文字を入力した段階で登録されている医薬品名が表示され、
:医薬品副作用リスク軽減支援システム利用例
表示された医薬品名を選択することで入力が行われます。医薬品名の入力後、患者から訴えがあった副作用症状を入力します。(②)ここでも文字を入力した段階で登録されている副作用症状が表示され、表示された症状を選択することで入力が行われます。この入力の際に患者が訴える症状が登録されていない場合は、薬剤師がどれに近いかを判断する必要ありますが、システムの仕様上、誤った症状を入力しない限り、見落とさないようにファジー検索されます。検索結果は検索がヒットした医薬品名がオレンジ色に表示されます。(③)ヒットした副作用名は「詳細」をクリックすることにより添付文書記載情報と照合することができます。(④)入力した副作用症状とは異なる場合がありますが、ヒットした副作用症状がオレンジ色にマークされます。
また、薬在宅訪問の際には、医師、看護師、デイケアスタッフがチームで行動します。医師が処方せんを出すので、副作用の原因と考えられ医薬品が特定されれば、即座に医薬品の変更が可能になります。このような場面でも利用できるように、どこにいてもインターネット経由でスマートフォンのからでも利用できる、個人情報を入力しない簡易版の も公開しました。
【 今後の展開 】
は、患者が服用しているすべての医薬品と発現した副作用症状の情報を蓄えることができます。それらの情報を活用することにより、多剤併用(医薬品同士の相互作用)による新たな副作用の発見につながることも期待できます。また、食生活や生活習慣などの情報を加えて、利用履歴を登録することにより、これらの情報を総合して、未知の副作用症状が見つかった際に、その原因を特定する状況証拠になるように改良を加えます。
現在のシステム構成に、クラウドコンピュータを利用したセキュアな環境で運用する を構築することにより、 で蓄えた情報をすべて利用することにより、医薬品添付文書にない多剤併用による副作用情報を活用できるようにします。
【 用語解説 】
(注1)処方カスケード: 服用している薬による有害な反応が新たな病状と誤認され、それに対して新たな処方が生まれるというものです。
【 本研究について 】
本研究は、JST CRESTの研究領域「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」の助成を受けたものです。
-本件に関するお問い合わせ先-
菅野 敦之(かんの のぶゆき)
明治薬科大学薬学教育研究センター臨床薬学部門/地域医療学
所在地:〒204-8588 東京都清瀬市野塩2-522-1
TEL 042-495-8496 E-mail: nkanno@my-pharm.ac.jp
明治薬科大学総務部広報課
TEL 042-495-8615 E-mail: koho@my-pharm.ac.jp
*8月4日から8月17日まで省エネ休暇として休業いたします。ご連絡はメールでお願いいたします。