教育

産学連携

臨床遺伝学研究室(住友ファーマ株式会社寄付講座)

遺伝性難病のひとつであるライソゾーム病の分子病理を解明し、診断や治療の向上を目指した研究を行っています。

「ライソゾーム病」は、細胞内小器官のひとつであるライソゾームの中に存在する酵素の欠損によって起こる一群の先天性代謝異常症です。本症では、本来はライソゾームの酵素によって分解される筈の基質が細胞内に蓄積するため、多彩な臨床症状を示し、欠損する酵素の種類によって約40種類のライソゾーム病が存在します。これらのライソゾーム病は、これまで極めて稀な病気と考えられ、根本的治療法もなかったため、「不治の病」とされて来ました。しかし、最近のスクリーニングなどの調査結果から、ライソゾーム病は、全体では数千人に一人の割合で発症する頻度の高い疾患群であることが知られ、小児科や内科などで、その臨床的重要性が再認識されるようになりました。さらに、遺伝子工学で作られたヒト組み換えライソゾーム酵素を定期的に血管内に投与する「酵素補充療法」が導入されたことにより、その治療薬の開発が世界的に競われています。
しかし、ライソゾーム病においては、その原因となる遺伝子レベルでの研究は進んだものの、病態を真に理解するのに必要な蛋白質分子レベルの研究は遅れており、ライソゾーム病を円滑に診断し、早期治療に結びつけるための診断システムも完成されていないのが現状です。また、現行の酵素補充療法の治療薬は、ライソゾーム病治療に大きな貢献をなしているものの、著しく高価であること、ターゲット臓器への取り込み効率が低いことやアレルギー反応などの有害副反応が生じ易いなどの多くの問題があり、その改善が患者・家族、医師などの医療関係者や行政から強く望まれています。
本講座は、これらの問題を解決するため、1)ライソゾーム病の病態を蛋白質分子レベルで明らかにすること、2)ライソゾーム病の疑いがある患者群を早期に円滑に診断するためのハイリスク・スクリーニングのシステムを構築すること、3)ライソゾーム病の病態や治療効果判定の目安となるバイオマーカーの測定法を確立すること、4)優れた治療法を開発することを目的として、基礎研究とその臨床応用を行います。