第8講 水素原子
水素原子
水素原子における電子の Hamiltonian は次のように与えられる。
H = -(h2/2me)∇2 - (1/4πε0)e2/r
ここでは次のような近似が行われている。
(1) 陽子の運動は電子の運動に比べて十分緩慢で波動関数は 陽子の部分と電子の部分の積の形に分離できる。
(2) 電子の質量 me は原子核(陽子)の 質量 Mp に比べて十分小さく, me / Mp は無視できる。
(3) 陽子は原点に固定されていて動かない。
したがって,原子内の電子の状態が水素原子の状態となる。
Schrodinger 方程式
Hψ(r, θ, φ) = Eψ(r, θ, φ)
水素原子の Hamiltonian は球対称をしているので極座標を用いる。
固有エネルギー
En = - [mee4 /{(4πε0)22h2}] (1/n2)
固有関数
ψn,l,m(r, θ, φ) = Rn,l(r)Ylm(θ, φ)
関数 Rn,l(r) の性質から,n ≧ l + 1 でなければならない。
n = 1, 2, 3, ...
l = 0, 1, 2, ...
m = -l, -l + 1, ..., l
n を主量子数,l を方位量子数,m を磁気量子数と呼ぶ。
教科書 p.253〜254 参照
角運動量 (2)
一般に Hermite 演算子 J = (Jx, Jy, Jz) が 交換関係
[Jx, Jy] = ihJz
[Jy, Jz] = ihJx
[Jz, Jx] = ihJy
を満足するとき,J を一般に角運動量と呼ぶ。
J2 = Jx2 + Jy2 + Jz2
とすれば,J2 と Jz は可換である。
[J2, Jz] = 0
したがって,J2 と Jz には共通の 固有関数が存在して
J2χj,m = j(j + 1)h2χj,m
Jzχj,m = mhχj,m
このとき,j と m は次のような値になる。
j = 0, 1/2, 1, 3/2, ...
m = -j, -j + 1, ..., j
電子のスピン
電子のスピンを
s = (sx, sy, sz) と するとき,s は交換関係
[sx, sy] = ihsz
[sy, sz] = ihsx
[sz, sx] = ihsy
を満足する。したがって,s は角運動量であり,角 運動量の一般論より
s2 と sz には共通の 固有関数が存在して
s2χs,ms(σ) = s(s + 1)h2χs,ms(σ)
szχs,ms(σ) = mss,ms(σ)
電子のスピンについては s = 1/2 で,したがって, ms = -1/2, 1/2 となる。
水素原子の固有関数
n,l,m,ms(r,θ,φ,σ) = Enψn,l,m,ms(r,θ,φ,σ)
ψn,l,m,ms(r,θ,φ,σ) = Rn,l(r)Ylm(θ,φ) χs,ms(σ)

演習問題
1. Bohr 半径
a0 = 4πε0h2/mee2
を概算しなさい。
(注) ここで h は h-slash(Dirac 定数) です。
この問題を通して勉強すること
原子のおよその大きさを知る。
解答は こちら にあります。

課題
1. 水素原子の基底エネルギーを概算してみよう。
2. 水素原子において電子エネルギーの固有状態を分類しなさい。 それぞれの状態は何重に縮退しているか。

SYLLABUS 目次

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