平成20年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

支援区分 研究拠点を形成する研究
事業名 ゲノム情報に基づく合理的な創薬研究の拠点形成
研究組織名 ハイテクリサーチセンター
研究プロジェクト名 ゲノム情報に基づく合理的な創薬研究
研究期間 5年



1.研究の目的と意義
■■近年増加している成人病・生活習慣病は、遺伝因子と環境因子の複雑な相互作用により発症し、現代の高度先進医療によっても完全治癒を望めないケースも少なくありません。また超高齢化社会を迎えて、生活の質(quality of life; QOL)の向上のためにも、寝たきり状態を来す種々の難病に対する画期的治療法の開発が切望されています。
■■一方2003年に、全ヒト遺伝子23,000の塩基配列解読が完了し、個々の細胞における遺伝子発現情報を網羅的に調べるDNAマイクロアレイ解析技術が確立され、創薬研究の中心はゲノム創薬へパラダイムシフトしました。
■■ゲノム創薬では疾患関連遺伝子・薬剤応答遺伝子・創薬標的分子を網羅的に解析、タンパク質立体構造情報から最適リード化合物を探索、データベース上のゲノム情報を最大限有効に活用して合理的な薬物デザインを行い、個人個人に最適な薬物療法を選択するテーラーメイド医療の実現を目指しています。ゲノム創薬に従事する研究者は、従来のオーソドックスな薬学知識に加えて、幅広い応用力を兼備した学際的センスが要求されています。このような高い能力を持った、次世代を担う若手研究者の育成は急務となっています。
■■本プロジェクトでは、近年のゲノム科学の急速な進歩に鑑み、合理的なゲノム創薬研究を通じて、複雑多様な生活習慣病・癌・神経難病の病態を分子レベルで解明し、早期診断法・治療法・予防法の樹立を目指します。また社会的要請の高いゲノム創薬若手研究者を育成します。研究事業を通じて、国内のゲノム創薬研究の中心的拠点形成を目指しています。





2.研究の計画と方法

[1] 研究体制
■■ハイテクリサーチセンター(High-Tech Research Center; HRC)は、全学総力を挙げての取り組みです。すなわち学内15名の主任研究者が、難病克服研究・発癌制御研究・生体分子機能解明研究・創薬基盤技術開発研究の4グループを形成し、互いに密接に連携して、ゲノム情報に基づく合理的な創薬研究を展開します(図参照)。
■■各グループ共通のアプローチとして、化学系グループが開発した創薬シード化合物を、生物系グループが培養細胞や実験動物に投与、細胞や組織の遺伝子発現を経時的にマイクロアレイで解析、薬効や毒性発現の標的分子と分子機序を解明、さらに化学系グループがNMRを用いて、リード化合物の構造最適化を行います。
■■研究遂行に当たり大学院生・ポスドク・助手・助教を積極的に活用、優秀な若手研究者の留学を支援、定期的に研究成果発表会を開催、ホームページで情報を公開、研究者間の交流を活発化し、ゲノム創薬研究者の人材育成に努めます。さらに研究事業を通じて、製薬企業や国公立私立研究機関との産官学共同研究体制の構築を目指します。


[2] 年次計画

[ 平成20年度 ] 総合教育研究棟にハイテクリサーチセンターを創設、マイクロアレイ解析機器を導入、専属オペレーターを配置します。
難病克服研究グループ(以下研究グループはGと省略)は高機能酵素分子設計、アルツハイマー脳マイクロRNA分離、血管前駆細胞分化誘導、AQP11欠損マウス腎遺伝子発現解析、発癌制御Gは抗腫瘍性低分子化合物精製、重金属誘導性発癌遺伝子解析、生体分子機能解明Gはペプチド核酸医薬用低分子化合物合成法開発、創薬基盤技術開発Gは血管内皮細胞粘着振動培養系、アスピリン耐性や抗真菌薬のスクリーニング系、動脈硬化症治療薬評価系確立に着手します。

[ 平成21年度 ]   NMR機器を導入。
難病克服Gはヒト型酵素発現酵母株樹立、マイクロアレイを用いてマイクロRNAプロフィール・血管前駆細胞遺伝子・モデルマウス腎薬物応答遺伝子を解析、発癌制御GはNMRを用いて抗腫瘍性低分子化合物構造解析、重金属応答性発癌タンパク解析、生体分子機能解明Gは標的化合物中間体合成、創薬基盤技術開発Gは薬効毒性スクリーニング系有効性評価・分子機序解明に取り組みます。

[ 平成22年度 ]   難病克服Gはヒト型酵素細胞レベル薬効解析、マイクロRNA標的遺伝子解析、血管前駆細胞移植、多嚢胞腎遺伝子発現解析、発癌制御Gは抗腫瘍性化合物大量合成系樹立、重金属毒性分子機序解明、生体分子機能解明Gは標的化合物中間体合成、創薬基盤技術開発Gは抗動脈硬化性RNAi薬効解析に取り組みます。

[ 平成23年度 ]   難病克服Gはヒト型酵素動物レベル薬効解析、アルツハイマー創薬分子標的同定、血管分化誘導因子同定、多嚢胞腎薬物応答遺伝子解析、発癌制御Gは抗腫瘍性化合物構造活性相関解析、担癌マウス薬効解析、重金属キレート剤探索、生体分子機能解明Gはリード化合物ファルマコフォア同定、薬物動態解析、創薬基盤技術開発Gはマイクロアレイを用いてアスピリン耐性SNPマーカー同定に取り組みます。

[ 平成24年度 ]   ゲノム創薬研究の総仕上げを行う予定です。
難病克服Gはヒト型酵素DDS設計、血管分化誘導因子薬効解析、多嚢胞腎治療薬同定、発癌制御Gと生体分子機能解明Gは抗腫瘍性・抗動脈硬化性リード化合物前臨床試験、創薬基盤技術開発Gは抗真菌薬と抗動脈硬化性RNAiのDDS最適化を完成させます。


3.研究により期待される効果
上記の研究の遂行により、(1)成人病や難病を克服する画期的診断法・治療法の開発、(2)高度先進的薬学研究推進の中心拠点としてのハイテクリサーチセンターの整備、(3)共同研究体制の構築を通じて、明治薬科大学の学術研究基盤を強化、(4)次世代を担う若手ゲノム創薬研究者の育成、(5)学術的研究成果の社会への還元などを達成することが期待出来ます。